004:マルボロ

理由は知らない。何故なのか、どうしてなのか。
訊いたことは一度たりとも無い。否、訊きたいと思ったこともない。
ソレが暗黙のルールだと思っていたからだ。

空気に独特の匂いが混じる。
いつものコトながら、未だ慣れないそれに、有城は顔を顰めた。

「トヨシマ!」

緩やかに、煙立つ。

名を呼ばれた豊島その人は、口元から手を離し笑った。
部屋のソファの陰に隠れていたにも関わらず、口調は穏やかだ。

そんな態度に苛ついたのか、有城は語尾を強めた。

「ココで喫煙しないでっていつも云ってるでしょ!?やめてよ!」

完璧に頭に血が上ってるようだ。心なしか頬も紅い。
健康にだって良くないんだから!と未だ捲し立てている。

豊島にだってソレが身体に悪いことくらい解っている。
しかしながら強烈な快楽と依存性に、長い間支配され続けている。

だからこそ、止められないのだ。

人生には時々刺激が必要だと、豊島は思っていた。
もしかしたらそれも止められない原因なのかもしれない。

ぼんやりと、そんなくだらないことを考えながら、
豊島は有城の怒鳴り声を聴いていた。

もうすぐ猛暑の夏がやってくる。

004:マルボロ:Indipendence Doll
独立人形初お目見え。平和な日常。
煙草は未だ吸ったこと無いですが(未成年だから)煙草の煙は好きではありません。
以前どこかで見た、喫煙者の肺の写真があまりにも恐ろしく記憶に焼き付いておりますので、
きっとこの先も吸うことはないだろうと思います。

03.06.22

|→