011:柔らかい殻

淙汰から離れて初めて、自分が如何に甘やかされてきたのかということを実感した。

例えば道を歩くとき。
淙汰と並んで歩くと、人とぶつかったり、車に轢かれそうになんて一度もなったこと無かった。
淙汰は俺をさりげなく内側に置いて。俺を危険なモノから護っていた。

例えばヤツの出すお茶は。
猫舌の俺を気遣って、いつも温めのお湯加減。

例えばヤツの話し方。
短気な俺に付き合っていつもいつも聞き手に回る。

気づいてなかったのは自分だけ。恐らく淙汰は俺の為に、もの凄く気を遣っていたのだ。
離れてみるまではちっとも気づかなかったコトに、取り返しがつかなくなってから気づく。
失ったモノを、後から悔やむコトほど馬鹿なコトなんて無いのに。
自分から離れていって、今更戻りたいだなんて。

虫が良いにも程がある。

011:柔らかい殻: 未完成奏鳴曲
離れて初めて気づくことって多々あるもの。
良い点にしろ悪い点にしろ。

05.03.06