暗く深い闇の中を、手探りで進む。
両の腕を四方八方へ動かしてみても、何も掴めない。
空を切る、鋭い音が脳内に響き渡る。
幾度探せど出口は見えず。
私は、唯々途方に暮れてしまった。
差し出される白い細く腕に、困惑する。
果たしてコレは、本当に私に向けられたモノなのかと思い、
握り返すのをついつい戸惑ってしまう。
「月夏、どうしたの?」
と、眉根を寄せながら久遠が問う。
「何でもない。」
私は努めて笑顔で返す。
しかし口の端が引き攣り、ぎこちなくしか笑えない。
きっと、酷く情けない笑顔だっただろう。
我ながら哀れすぎて笑ってしまう。
遙か向こうで、刹那が呆れてる。
あれほどまで嫌悪していた、光がとてもつもなく恋しい。
広がるのは常しえの闇。
足下も見えないほど深い、常しえの。
*
目の前に広がる、鮮血の生々しい紅い色だけが焼き付いている。
躊躇いもなく、手首に刃をたてる。
波のように、訪れては引いてゆく痛みの中で、風を切る、音がする。
歪む視界のその端で、誰かが私の名を呼んでいる。
差し伸べられた手と、身体を支える腕の感触が
私の脳に刻まれた最後の記憶だった。
03.07.15